女子高生店長のコンビニは楽しくない

女子高生店長のコンビニは楽しくない (ガガガ文庫)

女子高生店長のコンビニは楽しくない (ガガガ文庫)

今回は明坂つづり先生の『女子高生店長のコンビニは楽しくない』の感想です。ニーナ4巻はもう読み終わってるんですがこちらの感想を先に。
かなり否定的な感想(というか愚痴)となっていますので、一応折りたたんでおきます。
二学期から転校することが既に決まっている主人公・南里湊人は、意中のクラスメイト・支倉こももとの思い出を最後に作ろうと、彼女が店長を務める女性店員限定のコンビニで女装をしてバイトをすることにしたのだったという内容です。
まず良かったところは、女装主人公作品ではお決まりのトイレや着替え、化粧などの諸々のイベントがそれなりにしっかりと描かれていて、それらを経て主人公が段々と女装の魅力に無意識のうちにハマっていってしまう様子が描かれていたことでしょうか。女装作品という点が購入動機の大部分を占めた私にとっては、そこがしっかりしていたことは素直に喜ばしい点です。また、そういったイベントの多くにイラストを割いてくれた点も良かったです。
ただ、この作品の良いところはそれだけなんじゃないかというのが正直な感想ですね。読んでいる最中ずっと「なんだこの地雷認定必至なギャルゲみたいな展開」と思いながら読んでいましたから。
ヒロインとの接触→日常パート→問題発生→解決してハッピーエンド。この骨組を用意しただけの作品です。この骨組が悪いわけではなく、これ自体は物語構成の王道の起承転結そのものですし、そこにしっかりと肉付けしてあげればきちんと作品になるでしょう。その肉付けがストーリーや設定に深みを持たせるものであるか、キャラ萌えに特化したものであるかは作品毎に異なるでしょうが、この作品に関しては後者ですね。それが全く出来ていない。
主要な登場人物は、新人教育もろくにしない・できない怠けてばかりの不良女に、一言も喋らずにやる気の欠片もなくつっ立っているだけの電気泥棒、意思疎通不可能なレベルでネジの抜けた客。そんな彼女らが中心のコメディパートが面白いかといえば、ひたすら主人公に対して不愉快な行為しか行わず全く面白くない。しかも前述の各々の短所をコンビニの本部社員に指摘されても相手を避難してばかりで自らの非を認めたりは決してしません。もう全てにおいて登場人物が不愉快極まりない。(主人公とヒロインも魅力的かといえば怪しいところですが、比較的マシですかね。)
作中で彼女らの問題点を登場人物に指摘させているわけですから作者自身も彼女らの問題点に関しては間違いなく認知しているはずなのに、それを放置しているということは、この致命的問題を抱えたキャラクターたちによるコメディとも呼べないつまらないやり取りを作者は面白いと思っているのか、それとも作者もこれらの描写には苦戦してこの状態で出さざるを得なかったのか。前者なら私と作者の相性がとことん悪いだけですし、後者なら僅かばかりでも今後改善の余地を見出すことが出来ます。あとがきに作者の真意の一端でも書かれていれば。そう思ったんですが・・・。書いてあるのは作品とは無関係の身内話ばかり。もうね、どうしましょうこれ。
いくら女装目当てで手に取ったといっても、キャラクターがここまで壊滅的だとは思わなかった。結局、「コンビニのレジの店員の性別ってかなり気になるよね」ってことが作者は言いたかったんですかね。これほどまでに合わなかった作品は久しぶりでした。「キャラクターが可愛いだけ」って感想は褒め言葉なんだなぁと改めて思いましたね。さっさと忘れて次の本を読むことにします。