ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件

今回は野村美月先生の『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件』の感想です。
ウィストリア皇国の"万能の天才"としてその名を国内外に轟かせるグリンダ・ドイルは、同盟国エーレンへの派遣任務を目前に失踪してしまう。国家間の友好関係を保つため、グリンダの双子の弟であるシャーロット・ドイルが女装でグリンダのふりをして王様一家の家庭教師をすることに。といった具合の女装コメディ作品です。
野村美月先生といえば文学少女シリーズなどが有名で、私も文学少女は5巻あたりまでは読みましたが、この作品はあちらのようなシリアスな雰囲気は殆ど無く、終盤の締めを除いて基本的に明るいコメディが軸になっています。天才の姉の身代わりにさせられたニート予備軍で何をやってもヘッポコな弟・シャールが、色んなドタバタ劇に巻き込まれ女装がばれないか常に恐怖しつつも、いざという時は努力したり運だったりで危機を乗り越えるという、まぁよくあるお約束な展開です。しかしお約束だからこそ安心して読むことができますし、国王一家をはじめとする登場人物たちは皆良い人ばかりで読んでいてとても温かな気持ちになれます。シャールの女装主人公としての魅力も十分で、可愛らしさや土壇場での思い切りの良さで、読者のみならず登場人物から男女問わず慕われる良主人公です。
終盤はメインヒロイン格である第一王女・聖羅を天才故の孤独から解放してあげるという内容でしたが、シャールの心理描写からして聖羅よりもグリンダのほうがメインっぽいですかね。どちらかというとラスボス的なポジションかもしれませんが。グリンダ関係の話が終わってしまうと必然的にこの物語も終わってしまうので、主人公たちのドタバタな日常を満喫するためにももう少し彼女には行方不明でいてもらいたいものですが。
そんな感じで、女装主人公を中心として織りなされる賑やかで温かい物語でとても面白かったんですが、問題は売れるのかというところですね。作者曰く、3巻以降は売り上げ次第ということらしいので是非とも売れて欲しいのですが、従来の野村美月作品とはだいぶ毛色が違うのでやはり不安になってしまいますね。ということでここで布教活動を少し。
まず、本作はファミ通文庫公式サイトでWeb連載されていたものを文庫化したものですが、「Webで読んだからいいや〜」という人!書き下ろしがありますよ、書き下ろし!なんと60ページ!本編では描かれていない、登場人物たちの日常を綴った短編が4つ収録されています。
そして、文庫と同時発売のはる桜菜先生によるコミックス第1巻。
ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件 1 (B's-LOG COMICS)

ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件 1 (B's-LOG COMICS)

本編の賑やかさが遺憾なく表現されていて中々良いコミカライズですが、この漫画版と文庫のオビに付いている応募券2枚1口で特製小冊子を応募者全員にプレゼント!野村美月先生、karory先生、はる桜菜先生による書き下ろしSS、イラスト、コミックが収録とのこと。いやぁ、太っ腹だなぁファミ通文庫富士見書房もそこらへん見習ってほしいものです。
はい、以上一読者の宣伝でした。3巻以降出るといいな〜。