オウガにズームUP!

オウガにズームUP! (MF文庫J)

オウガにズームUP! (MF文庫J)

オウガにズームUP! 4 (MF文庫J ほ 1-7)

オウガにズームUP! 4 (MF文庫J ほ 1-7)

穂史賀雅也先生の『オウガにズームUP!』です。
完結してるのでシリーズ全4巻の感想ということで。

主人公・犬伏ユージはクラスメイト・井上ククルの秘密を知ってしまい、そのせいで以後彼女と同棲することになってしまう、というまぁよくあるご都合主義的なラブコメです。2巻からはクラスメイトの宮内久美子が対抗馬として参戦してきたり、ククルに一目惚れした赤井虎太郎がユージとククルの恋路を邪魔したりと賑やかになっていき、学園青春モノとしてかなり楽しく読んでいたわけなんですが、この作品、最終巻の4巻で物凄く駆け足で物語を終わらせにかかってるんですよ。それこそ「打ち切りだろ!」と叫びたくなるような急展開で。未だにこの終わり方には納得行ってません。

でも、この作者の文章から漂う雰囲気がすごくツボなんですよ。
最近よくある漫才トークみたいなハイテンションコメディーとかはなくて、ひたすら淡々とドライに物語が進んでいくんですけど、その中でも登場人物たちの淡い恋心を描写しすぎない適度な描写量と適度なスピードで表現していく文章は読んでいてとても心地良いです。

それが特に際立っているのが3巻第3話『理科準備室の星々』と4巻第2話『だってほら夏休みだから』ですね。
この2つの話、語り手がそれまで本編にほとんど(というか全く)登場していない脇役で、ぶっちゃけ本筋と全く関係ない番外編です。「これ書くぐらいなら本編のほうをもっとしっかり書いてくれよ!」という意見も尤もです。
でも個人的にはこの話、特に『理科準備室の星々』を読めただけでもこのシリーズを読んできた価値はあったと確信できる出来でしたね。語り手が恋に落ちる過程や、その気持ちに戸惑い悩む心情がとても丁寧に表現されていて、素晴らしい出来です。それこそこの番外編だけでも読んでほしいと思うほどに。読後感も文句なく、これこそ公式紹介文にもある「ほんわか穂史賀ワールド」だなぁと浸ってしまいます。

とまぁ、本編の結末が残念なことを除けば私的には文句のつけようがなく、定期的に読み直したくなっては新刊の消費を妨げているお気に入りの作品です。
穂史賀先生には番外編のような雰囲気の作品をもっと書いてほしいのですが、それ以前に新作は一体いつ出るんでしょうね…。