スカイ・ワールド

スカイ・ワールド (富士見ファンタジア文庫)

スカイ・ワールド (富士見ファンタジア文庫)

今回は瀬尾つかさ先生の『スカイ・ワールド』の感想です。表紙ではナンバリングされてるのに、背表紙や奥付には番号がふっていないですね。まず間違いなく続くでしょうけど。
武藤此史先生のイラストに惹かれて購入した今作ですが、内容はMMORPGの世界に入り込んでしまうというよくあるもの。プレイヤーをゲーム世界に閉じ込めた犯人が存在して、その正体と意図を求めて最終ステージを目指すという展開もよくあるものですね。この1巻ではヒロイン達とパーティーを組んで最初のステージをクリアしたところまでなので、まだ説明重視の序章といった雰囲気ですが、ゲーム要素の説明や敵との戦闘の描写でテンポが損なわれるということはなく、ゲーム部分を魅力的に非常に読みやすく書かれていると思います。ゲームオーバーになったプレイヤーキャラはどうなってしまうのかといったお約束設定もあったりと、ゲームダイブものとして押さえるところはしっかりと押さえていて、とても安定した滑り出しです。
キャラに関しても、ゲーム初心者のお嬢様で主人公の教えを素直に聞くかすみは純情ヒロインとして、集団プレイの楽しさやそのコミニティが崩れた時の悲しさを知っているゲーマーのエリは主人公と共感できる良き相方として嫌味がない非常に安牌なキャラ設定。主人公のジュンも、ゲーム世界での明確な目的がありそれを淡々とこなしていったり、かすみの好意にしっかりと気づいている点は好みですね。気づいているのにはぐらかしているのはヒドイじゃないかとも思わなくはないですが、保留している理由には共感できたりもしますし、現時点ではジュンはオンラインでの親友であるカイを追いかけることが最優先のようですし、納得はできますかね。カイがかすみのリアルでの親友というところを上手く活かせば、三角関係だったりと上手く展開できそうなのでキャラ描写ではそこらへんに期待します。
この1巻では前述の通り、従来通りのゲームダイブものの序章といった感じでそれ以上でもそれ以下でもないんですが、スラスラと読める文章の流れや、ゲーム世界の真相などが気になってしまう展開なんかは上手いなと思いました。キャラクターも薄味ながらも中々に魅力的で、武藤先生のイラストもあり非常に映えます。ずば抜けた特徴は無いですが、全てが安定してまとまっていて今後が期待できる良作といった感じです。本筋以外の短編も書きやすそうな設定なので、ドラマガを購読している身としては是非短編を書いてほしいですね。