織田信奈の野望

織田信奈の野望 (GA文庫)

織田信奈の野望 (GA文庫)

織田信奈の野望 9 (GA文庫)

織田信奈の野望 9 (GA文庫)

今回は春日みかげ先生の『織田信奈の野望』シリーズ既刊9冊の感想です。
現代の高校生・相良良晴が戦国時代にタイムスリップしてしまい、そこでは戦国武将たちは美少女となっていた、というよくある設定な作品です。この時期での感想ということでもちろんアニメの影響で読み始めたのですが、アニメは3話以降原作の読書ペースが先行したので見ていません。ということで原作オンリーな感想です。
ストーリーは基本的に史実に基づいて進んでいく戦国モノのセオリーを踏襲。そこに未来人である主人公が介入することで歴史が改変されていくというのがこの作品の醍醐味ですね。良晴が人死にを極力避けようとして歴史を改変し、それにより生き残った人の影響がまた歴史を変化させる。どんどん歴史が自分の知っているものと異なっていくことに不安を覚えながらも、信念を貫き通して戦場で奔走する良晴は中々に男前で格好良いですね。この主人公を軸として信奈に天下を取らせるという確固たる目的があるので、どれだけラブコメ成分が強くなろうと作品の方向性がブレることはないです。やっぱり物語の出来不出来は主人公で決まるといっても過言ではないですし、こういう一本筋の通った主人公は素直に好感が持てます。
また、史実をなぞっていくだけではなく、美少女が揃っているのですから当然ラブコメ要素もあります。そこに関わってくるのが本能寺の変。史実では明智光秀の謀反により信長が道半ばで倒れるのですが、この世界では光秀も女の子。周りの家臣たちが皆良晴と信奈の仲に気付いている中、唯一空気を読まずに良晴にアピールを繰り返し三角関係が繰り広げられるというとても美味しい展開になっています。この光秀が良いキャラしてますねぇ。良晴が信奈一筋な時点で物語的に勝ち目はないんですが、この三角関係が原因で本能寺の変が起こってしまうのではないか?という疑念がラブコメ部分だけでなく本筋である天下統一にも影響を与えうる展開が、光秀を単なるラブコメ要員ヒロイン以上の存在感を与えていますね。
毛利や武田、上杉といった強敵との戦いと、信奈と光秀の恋の本能寺の変。戦とラブコメの2つの話を上手く組み合わせて物語を進められていると思います。また巻ごとの繋ぎ方、次巻への流れも、歴史という明確な区切りのない連続した時間の流れを上手く表現した非常に続きの気になるものになっています。良晴視点での異なる歴史の追体験というのがこの作品の一番の魅力でしょうね。次は伊達政宗の番外編のようですが、単なるサイドストーリーなのか、それとも信奈や良晴らにがっつり関わってくる展開となるのかが非常に楽しみです。