安達としまむら

安達としまむら (電撃文庫)

安達としまむら (電撃文庫)

今回は入間人間先生の『安達としまむら』の感想です。久しぶりに私の好みド真ん中でした。
体育館の二階で授業をサボっていたところたまたま一緒になり友達になった安達としまむら。そこで二人は取り留めのない話をしたり、たまに卓球をしたりして二人きりでの時間を過ごし、友情を育んだ。それは普通の女子高生のようなワイワイ騒いで慣れ合うような関係ではないけれど、二人にとってはちょうどいい距離感。そんな風に日常を過ごしていくうち、安達はだんだんとしまむらに対してある想いを募らせていく。
てな感じの入間人間先生の最新作で、入間作品初挑戦。電撃文庫マガジンで読んで以来ドハマりして文庫になるのを今か今かと待ち望んでいました。内容は電撃文庫マガジン掲載分に書き下ろし2つを加えた全5章ですが、特に明確なエンディングや衝撃の展開が追加されたということはなく、雑誌掲載時の雰囲気をそのまま最後まで続けたものになっています。取り留めのない会話をし、卓球をしたり、ボーリングをしたり、カラオケにいったりと、なんということはない日常の繰り返し。掴みどころがなくて飄々としたしまむらと、そんなしまむらに段々と好意を募らせていきその想いに振り回される安達。そんな二人の気怠さを感じさせつつも非常に心地良い、絶妙な距離感と静かな時間の流れ。安達サイドでは同性に好意を寄せ、あーだこーだと悩んだりする描写がメインとなるので百合作品としても十分に見ることはできるというか、安達サイドに関しては完全に百合なんですが、それよりも二人の女子高生の特別なことのない普通の日常の一部を切り抜いた青春小説といった印象のほうが強いですかね。まぁ買った理由は百合目当てで、些細な事に一喜一憂する安達とかめっちゃ可愛いかったですけど、百合にしろ青春にしろどちらの雰囲気もこの淡さ、静かさが好みド真ん中で非常に楽しめました。いやぁここまで私の好みを突かれるとは。
この作品は「この場面が良い!このキャラが良い!」てなことは言わずに、ただひたすらに作品の空気を感じ、楽しむべき作品ですね。淡々と進む中でしっかり登場人物たちの心理が上手く描写され、見事に作品全体の空気を構成しています。うん、非常に良いです。もっとこの雰囲気を味わっていたいですが、ここで十分綺麗に締まっていますしね。安達がしまむらに告白するとすれば続きも出るでしょうが、それはちょっと違うか。いや、してもらっても全然構いませんが。なんにせよ続きが出るなら間違いなく買いますよ。こういった静かな雰囲気に浸る作品がもっと出てきて欲しいです。