しゅらばら!

しゅらばら! (MF文庫J)

しゅらばら! (MF文庫J)

しゅらばら! 6 (MF文庫J)

しゅらばら! 6 (MF文庫J)

今回は岸杯也先生の『しゅらばら!』既刊6冊の感想です。
主人公・八木本一大は彼女が欲しいという至って普通の高校生。女の子たちに出来るだけいい顔をし、頼みごとなどを引き受けていた結果、『みんなのいい人』のポジションが確立されてしまい『彼女いない歴=年齢』から脱却できずにいた。そんなある日一大はクラスメイト、バイトの同僚、幼馴染の3人の女の子から告白を受ける。しかしその告白には裏があり、3人が皆自分に都合のいい「彼氏役」を彼に頼んできただけだった。女の子の頼みを断れない一大は3人のニセ恋人役を引き受け、それぞれにバレないよう奔走することになる。
とは書きましたが、この作品の醍醐味は女の子の要望に応えるために駆けずり回る主人公ではなく、一大を巡って冷戦状態にある3人のヒロイン達の関係ですね。クラスメイトで声優の星川早少女、大金持ちのお嬢様でバイト仲間の天弓院真愛、幼馴染の怪力少女・氷魚鷹奈の3人が実は昔からの友達で、それぞれが一大に彼氏役を頼んでいることを物語途中で知り、以後主人公を巡る恋のバトルが繰り広げられるといった内容。ただ一大側は3人が他のヒロインのニセ彼氏事情を理解していることを知らないので、他の作品のようにラブコメ全開な展開にはならず、どのようにして他ヒロインを出し抜くかという胸の内の探りあいが続く展開となります。表向きには「私たち友達だよね」と言いながらも如何にして相手の邪魔をしよう、自分だけ主人公と良い感じになろうかと駆け引きを繰り広げる展開は適度なヒロイン達の黒さも相まって中々に良い感じです。まぁこれが修羅場なのかと言われると少し違うような気もしますが。
現状お気に入りのヒロインはお嬢様ヒロイン・天弓院真愛ですかね。メイン的立ち位置の早少女、幼馴染属性の鷹奈に対して真愛はヤンデレ要員といった感じで、望まない婚約や見合いを断るための口実だった一大との関係を家の人間に紹介することで着実に外堀を埋めていこうという黒さや他の女の子との関係に異常に執着してくる病み具合も素晴らしいですね。6巻で言及された「真愛こそ一大に望まない付き合いを強制している」という物語的な綺麗事を抜きにすれば真愛とくっつくのが一番丸く収まる展開だと思うんですが、まぁそんな上手くいくはずもなく、6巻最後に現状の三竦み状態を破壊する爆弾が投下されたわけです。さてこれからどうなるか非常に楽しみなんですが、まず間違いなく早少女なんだろうなぁと。以前「メインとして優遇されるヒロインはいらない」という記事を書いたんですが、この記事はちょうどこの作品を読んでいる頃に書いた記事でして、早少女がメインとして優遇される話じゃなくて、誰とくっつくか全く分からない恋のバトルが読みたかったなぁというのが私の率直な感想ですかね。
まぁそんなこと言っていて真愛や鷹奈とくっつくエンドになる可能性も無きにしもあらずですからね。絵師さんの出産もあり次巻は年度末とのことですので続きはまだ先ですが、ヒロインの周囲からの動きが活発化しそうな7巻が楽しみで仕方ありません。1巻表紙がメインヒロインだなんてくだらない決まりをぶち破ってやれ、お嬢!