冴えない彼女の育てかた2

冴えない彼女の育てかた 2 (富士見ファンタジア文庫)

冴えない彼女の育てかた 2 (富士見ファンタジア文庫)

今回は丸戸史明先生の『冴えない彼女の育てかた2』の感想です。
特徴がないことが特徴な女の子・加藤恵と運命的な出会いをしたと感じた主人公・安芸倫也が彼女をメインヒロインとしたギャルゲーを作る、という本作は第2巻。前回できたサークルも本格的に始動し、今回はシナリオを担当する霞ヶ丘詩羽先輩のメイン回。表紙も詩羽先輩です。まぁ前回スペンサーさんでしたから今回は詩羽先輩だろうとは思っていましたが、次あたり恵が来るんですかね?
まぁ表紙はさておき、今回の本筋はゲームのプロット段階での詩羽先輩と倫也の意見の相違。前世での因縁がある2人の登場人物が前世での2人として結ばれるのか、それとも現世での2人として結ばれるのかという二択が、そのまま詩羽先輩をとるか恵をとるかという二択になっていますが、倫也はどちらも残すマルチエンドを選択。ゲームの中ではマルチエンドなんてこともできますが、この時点で倫也の気持ちは完全に恵に向かっているんですよね。この場面で詩羽先輩がかなり真剣に倫也に想いを寄せていることが明らかになりましたが、エンディングを追加された時点で事実上敗北なんですよねぇ。まぁこの作品はもともと加藤恵がヒロインであることが約束されている作品ですが、こういった策略を巡らせたり毒舌吐いたりするタイプのヒロインはその後も何かとそういった特徴を活かして恋愛バトルに絡んでは来るでしょうから、先輩には大いに戦局を掻き乱してもらいましょう。
で、肝心の唯一無二のメインヒロイン・加藤恵のほうは相も変わらずフラットな感じでしたが、最後のスペンサーさんとのやり取りでの僅かな嫉妬、いいですね〜。丸戸先生に求めているのはこういった絶妙なヒロイン同士の掛け合いや感情の発露の描写なんですよね。スペンサーさんにしても前半で多用された幼馴染ツンデレ描写もそれはそれで良いものなんですけど、そういうベタな描写よりこの5.5章のような掛け合いが堪りませんね。いや、こっちはこっちで十分ベタであからさまなんですけど、この厭味ったらしい感じが非常に読んでいて楽しい。もう個人的には5.5章だけでいいですよと言ってしまいたくなるくらいこの8ページがお気に入りです。
あと1巻の感想でだいぶ書いた「ギャルゲーっぽさ」についてはだいぶ改善がなされていましたように思います。台詞多用で軽快な掛け合い主体の丸戸先生らしさはそのままに、ある程度ラノベの一人称モノのテイストに近づいたんでしょうか。ただ私がギャルゲ文を紙媒体で読むことに慣れただけかもしれませんがね。
主人公は現時点で恵一択状態ですが、そこからどう詩羽先輩やスペンサーさんが戦況をグチャグチャにドロドロに掻き乱してくれるかが非常に楽しみな作品ですね。丸戸先生ならきっと期待に応えてくれると信じています。あ、でも医大生の横槍は勘弁して下さいね、やんやんややんやん。