司令官レオンの覇道

司令官レオンの覇道 (富士見ファンタジア文庫)

司令官レオンの覇道 (富士見ファンタジア文庫)

今回は築地俊彦先生の『司令官レオンの覇道』の感想です。
歴史上の偉人の生まれ変わりである転生者(リザーバー)は国立新武高校に集められ、特殊能力によって召喚したミニチュア兵士を戦わせ学内ランキングを競っていた。そんな高校に転生者を補佐する参謀(スタッフ)として転校してきた軽野健流は、ナポレオンの生まれ変わりで校内ランク最下位の名波斗・N・レオンとタッグを組むことになる。ともに一位を目指すことになった2人はランク上位の転生者たちに勝つことが出来るのか!?
といった感じの内容で、よくある偉人転生モノにカテゴライズされる作品です。ヒロインはナポレオンの他に董卓の生まれ変わりの董多久美やフリードリヒ2世の生まれ変わりの二瀬・フリーダ・凍紀が登場し、彼女たちを健流とレオンが協力して倒すというのがこの1巻のメイン。ランキング最下位のレオンが彼女たちに勝つには兵力の強化が必須で、強化するためには転生者と参謀の精神的距離を近づける、つまりは恋愛感情を持たせればよいといったご都合的な設定でラブコメ方面への動機付けも行われています。まぁラブコメ的には「健流は私の参謀だ」的なことを各ヒロインが主張してドタバタといった展開が繰り広げられる良くも悪くもテンプレなものとなっていますが、最初からそうなることが予想できた分それなりには楽しむことが出来ました。個人的には皮肉屋の凍紀が中々にお気に入りのヒロインですね。メインのレオンがどこかどころかあちこちでよく見かけるような典型的なキャラなので相対的に凍紀がよく見えたのかもしれませんが、今のところは彼女が一押し。多久美はまだキャラが薄いなぁ。
ブコメとしては平均的でしたが、この作品の最大のポイントである「偉人の生まれ変わり」という設定があまり活かされていなかったかなと思います。名前だけナポレオンだのなんだのと言われても、特にそれらしい言動やキャラ付けが殆ど無いのでは偉人の名を用いる必要はあったのかと疑問に思ってしまいます。彼女たちが行う戦闘にしても偉人同士の夢の対決!といったものではなく、召喚したミニチュア兵士をぶつからせるだけの単純なもので、多少戦略的なことをしているような描写もあるにはあるのですが、それでも全体として見るとかなり淡白な戦闘描写となっていますね。本人たちが直接戦う異能バトルじゃいけなかったんでしょうかね。
「偉人の生まれ変わり」という設定が活かしきれていなかったり、戦闘描写が淡白だったりと色々と欠点はあるものの、キャラクターは皆嫌味なく描かれていて、キャラを追いかけていくことに専念すれば可もなく不可もなくといった感じでしょうか。なんというかとても築地俊彦先生らしい作品な気がします。ナンバリングはされていませんが今回の締め方からして続きは出るでしょうから恐らく買うでしょう。出来れば次はもう少しバトル部分に力を入れてくれればとも思いますが、キャラが可愛く描かれていたらきっと満足するんだろうなぁとも思ったり。単純なもんです。