やがて魔剱のアリスベル

今回は赤松中学先生の『やがて魔剱のアリスベル』の感想です。
主人公・原田静刃はこの春から異能者の教育機関である居鳳高校に通うことになった高校1年生。居鳳高校で自らの異能を自覚した静刃は、同じく居鳳高の生徒である立花・氷焔・アリスベルたちと共に過ごすうちに、全て集めれば願いが叶うという鳳の欠片を巡って繰り広げられる異能同士の戦いに巻き込まれていくことになる。
といった能力者同士のバトルにラブコメを織り交ぜた、『緋弾のアリア』シリーズでお馴染みの赤松中学先生の新作です。内容は、異能を持つ主人公が同じく異能を持つ魔女や魔法少女、先端技科学兵装を身にまとう少女と鳳の欠片を賭けて戦ったりしつつ、美少女たちと順調にフラグを立てていくという分かりやすい展開。各々が何かしら暗い過去を持ち、それに立ち向かうため願いの叶う鳳の欠片を求めて戦うという構図も、その戦いを通じて主人公が男らしさを発揮してヒロインが惚れるという展開もありきたりといえばありきたりですが、そこは『緋弾のアリア』で似たような話を13冊も書いている赤松先生、細かいことを気にさせずに勢い良く読ませる文章は流石ですね。不穏な空気を漂わせつつ良い所で次回に続くクリフハンガーっぷりも健在で、非常に赤松先生らしい作品となっていると思います。設定に関しては「異能です」の一言で全て片付くので細かいことは気にしたら負けです。
そういった赤松先生らしいバトルラブコメ展開もさることながら、今作の最も注目すべき点は『緋弾のアリア』シリーズと世界観を共有しているということでしょう。アリアを読んであることで楽しみ方が広がるというのはアリア読者としては非常に嬉しいことです。というかアリア読者はそこ目当てで買う人も多いでしょうね。武偵という単語がさらっと出てくることから始まり、GⅢの部下の九九藻の姉・八九藻が主人公のクラスの副担任として登場したり、アリスベルの親の仇が藍幇だったり、京菱キリコの使う武器は平賀文が設計したものだったり、レキの「私は一発の銃弾」のフレーズが出てきたり、鵺が右目から孫と同じ(なんでしょうかね?)レーザービームを発射したりと随所に緋弾のアリアとの繋がりを示す要素が散見します。もちろんアリアを読んでいなくても楽しめるようにはなっているとは思いますが、やはりアリアを知っていたほうが十二分にこの作品を楽しめるでしょう。というわけで今後もアリア関連の描写をどんどん入れてもらって構いませんよ。あとがきにも今後の両作品のリンクを匂わせる発言もあることですし、そこのところ存分に期待します。
そんな感じで、個人的にはベタなバトルラブコメ作品単品としてよりもアリアシリーズ関連作としての印象のほうが強い本作ですが、今回の締めの部分はそれ単体で気になっているので早く続きを!と言いたいところですがアリアの続きも早く読みたい。この2作品並行が両作品の刊行にどう影響を与えるのかという読者が気にしてもしょうがないことを気にしながら赤松先生の新刊を待ちます。