桜色の春をこえて

桜色の春をこえて (電撃文庫)

桜色の春をこえて (電撃文庫)

今回は直井章先生の『桜色の春をこえて』の感想です。
主人公・真世杏香は高校入学とともに一人暮らしを始めるはずだったが、手違いにより停学歴アリで不良と噂の1つ年上の同級生・澄多有住と同居することになってしまう・・・といったあらすじです。電撃文庫の公式HPを見て「こいつは百合っぽいぞ!買うしかねぇ!」と発売を楽しみに待っていた今作。結論から言えば百合作品とは言えないかもしれませんが、なかなか良質のガール・ミーツ・ガールな青春ストーリーでした。
序盤は「高校入学で私の未来は明るいの!」と口では言っている割に事あるごとに過去のトラウマ回想が挟まってくるので読んでいるこちらとしてもあまり物語に乗り切れずにいて、なんか後ろ向きな主人公だなぁと思っていたんですが(理由が理由なのでしょうがないのですが)、杏香が停学をくらって有住と段々仲良くなっていくあたりからは展開が明るくなるとともに読みやすく、そして面白くなっていきました。それぞれが抱える過去の問題について言い争いになって仲違いしてしまうも、最後は友達の後押しもあり勢いをもってして解決という流れはありがちではありましたが、過去を振り切り未来へと進もうとする彼女たちの意志はしっかりと表現されていたように思ったので、奇を衒わないで正解ですね。読み終わってみれば、最初の杏香の暗い過去回想やネガティブ思考も含めて心理描写がしっかりとされていたのではないかと肯定的に捉えることができています。
期待していたような物語ではありませんでしたが、この物語を読めたことは予想外の収穫だったかなぁと思います。この話はこれ単体で綺麗に終わっているので続きが出る可能性は低いかもしれませんが、この作者の作品なら別の作品も読んでみたいと思いますね。続きが出るのならそれに越したことはないですが。出来ればまた女主人公を期待したいところです。