いもうとがかり

いもうとがかり (MF文庫J)

いもうとがかり (MF文庫J)

今回は月見草平先生の『いもうとがかり』の感想です。前作の『かぐや魔王式!』は最後の2冊をまだ読んでなかったりしますが、まずは新しいものから!
主人公・天乃翔太はクラスメイトの一片愛に玉砕覚悟で告白したと思ったら、実は相手を間違えていて愛によく似た妹の自称木星人の恋に告白してしまった。しかも返事はOK。誤解を解こうにも、妹を溺愛する愛から恋の世話をする”いもうとがかり”に任命されてしまう。といった感じの話です。
内容はあらすじから想像できる通りの内容で、2人で過ごしているうちに段々・・・てな話です。特に捻りはありません。能力者が飛び交ってバトルするような展開でも、大量の美少女が主人公にわらわら群がってくるような展開でもありません。山場がないわけではないですが、そこまであからさまに盛り上がるシーンがあるわけでもありません。けど、なかなかに私のツボを突いてきた話でした。恋は別に生粋の電波少女というわけではなく、同級生の陰口には涙するいたって普通の女の子ですし、翔太も「現実だ!確率だ!」といいつつも小さな頃はUFOだったり宇宙だったりに興味を持つ男の子だったわけです。恋は自分の理解者を、翔太はかつて自分が追い求めていたものをそれぞれ相手に求めて段々と惹かれていく過程がしっかりと描かれていて、読後感もとても良い感じでした。後半部分の翔太が間違えて告白した真実を打ち明けようと悩むところでも、現在の現実主義の理念だったり真面目さと過去の自分の夢、恋と過ごす時間の居心地の良さとが対立する様子が伝わってきてよかったです。間違い告白の件も最後にさっぱりとキリをつけましたし、なかなかいい主人公でした。ただ、「整った!」とかいう口癖はどうかと思いますが。
設定にしろ内容にしろイラストにしろ、昨今の流行のラノベのような派手さはほとんどありません。しかし、互いに正反対の2人が惹かれあっていく様子を丁寧に描いた青春小説として非常に好感触な話でした。自分が読みたいと思っていた物語をある程度読めたかなという感想です。たまにはこういう落ち着いた優しい話もいいものだ。あとがきを読む限り続きが出るようですが、地球探検記から想像される恋と翔太の過去のつながりくらいしか気になるところはありませんね。下手に愛や刑部を絡めたラブコメにする必要はないかと。ダラダラ続けるような展開にならず、2、3巻でサラッと終わるような感じでお願いします。