いもうとがかり2

いもうとがかり 2 (MF文庫J)

いもうとがかり 2 (MF文庫J)

今回は月見草平先生の『いもうとがかり2』の感想です。
木星人を自称する一片恋と付き合うことになった主人公・天乃翔太の物語は2巻目。恋の姉である愛から”いもうとがかり”に任命されて一片姉妹と共に過ごす翔太だが、ある日恋のクラスに転校生・文月ゆうがやってくる。彼女も転校早々自分は木星人であると宣言し、恋は同胞が現れたと喜ぶのだが、ゆうが木星人を自称するのにはある理由があった―。
前巻で勘違い告白騒動にキリをつけて、今巻では新キャラ投入によるラブコメ展開を持って来ましたね。一片姉妹と翔太の中に文月ゆうを投入したことで、全体的に複数ヒロインによるラブコメらしいイベントが多く描かれています。ただ、それによって1巻であった静かな雰囲気が崩れてしまったかというとそうではなく、文月ゆうというキャラクターが近すぎず遠すぎずの絶妙な位置で描かれているおかげで、青春物語としての良さが一層引き立っています。表面上はMFJらしさが見受けられますが、本質は地に足ついた落ち着いた恋愛模様です。1巻でその雰囲気に惹かれた私にとってはそれだけで充分に楽しめる作品となっていました。
しかし、ゆうの立ち位置は完璧なんですが、なぜそこに立っているのか、なぜ翔太にそこまで好意を寄せるのかという根拠がほとんど示されていない点は不満ですね。初対面であそこまでの好意はさすがに不自然です。また、オチのゆうの家庭内事情についても唐突感があったといいますか、終盤にいきなり説明されて「父親が〜」なんて言われても他人事すぎて感情移入がしづらいです。木星人を自称する理由としては妥当かもしれませんが。
そんな感じで、文月ゆうという新キャラを配置したおとなしめのラブコメとしての側面はかなり優秀ですが、部分ごとの噛み合いがどこかズレているような感じがしました。前巻で仄めかした恋と翔太の過去についても今回も仄めかしただけで物語的な進展はありませんでしたので、次巻ではそこらへんに突っ込んでほしいですね。キャラクターに関しては、新キャラのゆうも良かったですが、恋が木星人だとか電波なこと言いつつ、純粋に翔太に好意を寄せる普通の女の子としての可愛らしさに満ち溢れているのがとてもいいです。やはりメインヒロインが純粋に可愛いと俄然読む気力が湧きますね。彼女には今後もブレないでほしいところです。