おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!

今回は村上凛先生の『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!』の感想です。最近こういうタイトル多いですね。タイトルのインパクトだけじゃ駄目ですけど、それでもやはり重要なアピールポイントなんでしょうね。その販売戦略もそれなりに効果があったらしく、発売日を逃した私はなかなか手に入れることができずにやっと読むことが出来ましたよ。
主人公・柏田直輝は中学時代オタク趣味をオープンにしていたために痛い思いをし、高校入学を機に隠れオタになろうとするが早々に同級生のギャル系スイーツ美少女・恋ヶ崎桃にバレてしまう。桃はその秘密を口外しない代わりに、オープンオタだけどイケメンリア充の鈴木君と仲良くなるために私をオタクにしてくれと強要。一方の直輝も意中の同級生・長谷川翠と恋仲になるために、桃にリア充になる手助けをしてもらうことに。そんなオタクとギャルの奇妙な協力関係物語…。
…あらすじを書いてみると、至る所で言われているようにやっぱり思い浮かぶのは『とらドラ』ですねぇ。協力関係を続けているうちに仲良くなって、終盤では互いのことを認め合うといった展開も容易に想像できる、言ってしまえば目新しい要素の無い量産型ラノベ的展開です。文章は心理描写よりもあったことを淡々と書いていっているため、序盤では特に単調さが気になったりもしましたが、後半はセリフ主体となったためそれなりにテンポ良くなったかなという印象。新人さんということなので2巻以降劇的に変わることもあるかもしれませんが、ドラマガの短編ではまだ大して変化は見られませんね。
ただ、主役2人のキャラ造形は良いですね。直輝の行動については作者の経験談がモデルだそうで、そのためか中々リアルな痛さが漂っています。桃についても、変に暴力や理不尽展開に持っていかずあくまでも正論を述べている点には好感が持てます。実は純情な娘だとか、直輝に対する高圧的な態度だったりだとかお約束的な要素もあるにはありますが、そちらに偏り過ぎていないバランスが良いですね。今後単なるツンデレになってしまう不安もないことはないですが、そこは現時点では何とも言えませんかね。
そんなわけで、「どこかで見たことのある要素を詰め込んだ今時のラノベ」といった印象を抱かざるを得ない本作。現時点ではそういった今時な要素が好きなら楽しめるかなといった程度の作品ですが、今回ほとんど描写の無かったもう一人のヒロイン格・長谷川翠を今後どう動かすかでだいぶ変わってくるかもしれません。直輝と長谷川さんが仲良くなることによって桃を含めた三角関係に…ってのもありきたりですけど、すんなり直輝と桃がくっつくよりは、もう収拾がつかないってくらいに無茶苦茶のグチャグチャのドロドロな斜め上に行って欲しいなぁなんて、ほぼ無いであろう可能性を夢想したりしています。しかしそれだと直輝がこれでもかというほどヘタれそうだなぁ。まぁ長谷川さんが何とかしてくれるだろう、頑張れ長谷川さん!